JSIBDの支援のもとヤンセンファーマ株式会社が実施している臨床研究「クローン病患者の発端コホートレジストリ研究 (iCREST-CD)」のサブグループ解析の結果がJournal of Crohn’s and Colitisに掲載されました。
「クローン病患者の発端コホートレジストリ研究 (iCREST-CD)」は、JSIBDの支援のもと、ヤンセンファーマ株式会社が実施しているレジストリです。iCREST-CDでは、2016年6月から2020年6月までに新規に診断されたクローン病患者を登録し、4年間治療内容、臨床経過、予後を追跡することで、日本におけるクローン病の患者像、治療、長期経過などを把握し、クローン病診療の発展へつなげることを目的としています。国内の19施設が参加しており、日本のクローン病患者の約1%に相当する673名が登録されています。
Title: Diagnosis and Clinical Features of Perianal Lesions in Newly Diagnosed Crohn’s Disease: Subgroup Analysis from Inception Cohort Registry Study of Patients with Crohn’s Disease (iCREST-CD)
今回の論文では、サブグループ解析として肛門周囲病変を有する患者の人口統計、臨床的特徴、およびQOLについて報告しました。
新たにクローン病と診断された患者672人中324人 (48.2%)に肛門周囲病変が認められました。 このうち71.9% (233/324) が男性でした。肛門周囲病変の有病率は、40 歳未満の患者では40 歳以上の患者と比較して 高く、年齢とともに減少しました。最も一般的な肛門周囲病変は痔瘻 (59.9%)と肛門周囲膿瘍 (30.6%)でした。多変量解析では、男性、40歳未満、回腸結腸型が肛門周囲病変の有病率の高さと有意に関連している一方、狭窄型とアルコール摂取は有病率の低さと関連していました。肛門周囲病変を有する患者は、肛門周囲病変を有さない患者と比較して、疲労の頻度が有意に高く (33.3% vs 21.6%)、仕事の生産性と活動性の障害 (36.3% vs 29.5%)と、活動性の障害 (51.9% vs 41.1%)は数値上は高い結果でした。
本研究の結果から、クローン病診断時に、約半数の患者に肛門周囲病変が存在し、これが疲労や日常活動の障害と関連していることが明らかになりました。
PDFはhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36869815/よりダウンロードできます。
臨床疫学委員会
担当理事:久松 理一
委 員 長:松岡 克善